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HOW TO BUILD A CAR/Adrian Newey [Books]

エイドリアン ・ ニューウェイ HOW TO BUILD A CAR - F1 デザイン -

エイドリアン ・ ニューウェイ HOW TO BUILD A CAR - F1 デザイン -

  • 出版社/メーカー: 三栄書房
  • 発売日: 2020/04/28
  • メディア: 単行本

 エイドリアン・ニューウェイと言えば、F1のカーデザイナーの第一人者として有名ですが、そのAニューウェイが自身の半生をを著した自伝を出版して、その邦訳版が出版されると聞いて、大学で機械工学を専攻したメカ屋の端くれのワタクシは、早速購入することを決めました。この「How to Build a Car」を、本当はAmazon Kindle版が欲しかったのですが、なんと電子出版版がそもそも存在ぜず、泣く泣く書籍版を購入しました。しかし新書判で全655ページもあるとなかなかの迫力です(汗)。とても持ち歩く気になれません(笑)。

 Aニューウェイは、自身の作品の中で、March 881(1988年)、Williams FW14(B)(1991-2)、Williams FW18(1996年)、McLaren MP4/13(1998年)、そしてMP4/20(2003年)を傑作車としている一方、March CG891(1989年)、Williams FW16(1994年)、McLaren MP4/18(2003年)は失敗だったと語っています。Aニューウェイは負けず嫌いで知られていますが、負けはちゃんと認めていたようですね(笑)。

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Leyton House March 881(1988年):AニューウェイとしてはF1処女作にして注目を浴びた1台です。1988年シーズンに鈴鹿のストレートでマクラーレン・ホンダMP4/4を一瞬でも抜いたことで有名です。

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Williams FW14B(1992年):前年のFW14にリアクティブ・サスペンションを搭載、Nマンセルが9/16勝でドライバーズタイトル獲得、同僚のRパトレーゼが鈴鹿で1勝を挙げています。あまりの速さに翌年にアクティブサスペンションは廃止になってしまいました。

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Williams FW18(1996年):Dヒルの規格外のサイズに合わせた(寝そべって座る)快適なドライビングポジションを実現したマシンです。このクルマを用意してもらったDヒルは年間チャンピオンを獲得しています。Dヒルいわく、「重量配分が理想的で、しかも空力バランスに優れているから、唐突な挙動というのがほとんどないのさ。少しきっかけを与えてやるだけで、意のままに操れる。ドライビングフィールを言葉にするとしたら、まさにうっとりという感じかな」だそうです(笑)。

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McLaren MP4/13(1998年):Mハッキネンが初タイトルを獲得しました。このときまでは、ニール・オートレーがチーフデザイナーでした。Aニューウェイはお手伝い程度だそうです。

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McLaren NP4/20(2005年):一方コチラはゼロからAニューウェイが設計したマシンです。レギュレーション変更にうまく対応してサーキット最速の評価は得られたものの、信頼性に問題を抱えておりドライバータイトルもコンストラクターズタイトルも2位にとどまりました。

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Leyton House CG891(1989年):ここからは失敗作の話になります。ワタクシ個人的にはかなり好きなクルマですが、攻めすぎた空力のおかげであまりにもサーキットコンディションにセンシティブになってしまい、良いところは全くありませんでした。Aニューウェイいわく、「借りていたサウサンプトン大学の風洞の老朽化が原因で、風洞と実走行の相関が低くなっていた」そうです。まるで道具や装置のせいにしているような(笑)。

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Williams FW16(1994年):Aセナの最後のクルマとしても有名なFW16。アクティブサスペンション廃止の初年度、パッシブサスペンションの開発に一歩で遅れたウィリアムズですが、空力上の不具合を認めつつも改良が間に合わず結果として、Aセナは帰らぬ人となってしまいました。

 Aニューウェイは本著作でこの事故について語っていますが、「Aセナのリクエストで改修したステアリングシャフトの改修部分の破損ではなく(一部直径を細くしたのにも関わらず、肉厚を上げずに角にRを付けなかことが発覚して、一時有力な事故原因として報道されておりました)、セーフティカーは長時間コース上に滞留したためのタイヤ空気圧の低下と、クラッシュしたクルマのデブリを踏んだことによるリアタイヤのパンクによる」そうです。

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McLaren MP4/18(2003年):開幕前のテストで空力面で不具合が発覚してお蔵入りになったマシンです。代わりに前年のMP4/17を改良したMP4/17Dが全戦投入されています。Aニューウェイが「モノコックを作り直さないと直らない」と言ったにも関わらずエンジニア部門と対立した結果、翌年にMP4/19としてシーズンに投入されました。しかしAニューウェイの予想通り大苦戦を強いられたため、モノコックを作り直したMP4/19Bを第11戦のイギリスGPから投入することになりました。

 本の内容については、最初のほうはエンジニアリング的にシンプルで分かりやすかったのですが(それでも難しいのには変わりありませんが)、レッドブル時代になると、フジTV F1解説の川井ちゃんが日頃叫んでいる単語が目白押しでよく分かりません(汗)。それでも結構興味を持って読みすすめることができますよ。分厚い本ですけど(笑)。

 ワタクシがこの本の中で印象に残ったのは、

・もともとレースが好きで、学生の頃から自分でクルマを整備してレースに参戦していたので、車の構造は理解していた。そんななか、レーシングドライバーよりも、エンジニアとしての適性を感じていた。

・当時グランドエフェクトがF1を席巻したものの、まだ空力のスペシャリストがいなかったので、サウサンプトン大学航空宇宙学科卒のAニューウェイが活躍する余地があった。ちなみにAニューウェイは最初からレーシングカーのデザイナーになるために航空宇宙学科に入学している。

・大きな組織(チーム)に所属して成功しても(ウィリアムズ、マクラーレン)、人の手柄を横取りしているようなので、もしろイチからチームを立ち上げて成功する(レイトンハウス、レッドブル)ことを好んでいた。

・いまだに製図のドラフターをこよなく愛す。

・仕事に夢中になると、その他のことは全く駄目。

・今の奥さんは3人目、子供は4人(笑)

ってところでしょうか(笑)。



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