【Case Study】東芝デジタルメディアネットワーク社 2005年-5/8 [MOT after Graduation]
WBS在学中に一度は書いてみたいと思っていた、「ケース」を今回書いてみたので今回全8回に渡ってアップロードしたいと思います。「ケース」のテーマは、次世代光ディスクについてです。ソニー他のブルーレイ・ディスクと東芝のHD DVDがポストDVDの座を狙って熾烈な闘いを繰り広げたことを覚えている方は多いでしょう。第5回は「ソニー株式会社」です。
このケースはすべて公に発表されている資料に基づいて作成されています。一部人物の名前は仮名を用いています。またこのケースは特定の企業の優劣を論じるものではありません。
5. ソニー株式会社
ソニーは前にも述べたようにSDとMMCDの規格統一の争いに敗れた後は、DVDの記録規格DVD+R/RWをフィリップスと共同で2001年に策定した。これが後にDVDの記録規格を乱立させ、規格混乱の原因となった。その後は、失地を挽回するために新たな戦略を密かに立てていた。それは、DVDをスキップして一気に次世代の光ディスクへ移行してしまおうというものである。その為次世代光ディスク研究開発が急務となっていた。
ソニーは1997年よりフィリップスと共同でDVR-Blueの規格策定を行なっていたが、途中で松下電器産業が規格策定に参加し、最終的には2002年の9社合同で「Blu-ray Disc」の発表をおこなった。しかしそこには東芝の姿はなく、東芝は独自の路線を歩むことになる。
ソニーはBlu-rayが最後の光ディスクのフォーマットになると考えていた。光ディスクの記録密度を上げるには、半導体レーザーの発振波長を短くするか、対物レンズのN.A.(開口数)を大きくすれば良い。半導体レーザーの発振波長を短くして紫外線領域まで短くしてしまうと、メディアの材質に利用されているポリカーボネートと呼ばれるプラスチックの紫外線透過率が極端に低下してしまい、いくらレーザー光を当てても信号の読み出しが不可能になってしまう。この為青紫色レーザーの発振波長はばらつきも含めて405nmに設定された。
さらに対物レンズのN.A.(開口数)が高くなったがために、ディスクの保護層をDVDの0.6mmから0.1mmまで薄型化した。当初ソニーはディスクに0.1mm厚のシートを貼り付ける工法を採用していたが、ディスクの歩留まりに問題を抱えていた。Blu-ray Discでは2層ディスクを規格化することになっていたが、これは表面に0.1mmの保護層を貼り、その下にさらに薄い保護層をもう一枚貼り付けることを意味していた。
一方、松下電器は従来DVDのメディアを作成するときに採用した工法であるスピンコート方式で開発を進めていた。これはメディアを回転させながら、液状の樹脂を流しこんで定着させる工法である。CD,DVDでは実績のある工法ではあったが、薄い保護層をばらつきなく形成することが技術的課題となっていた。東芝はこのメディア開発の現状に対して、「BD陣営は、見込みがないのに出来ると言っている」と指摘したものと思われる。しかしソニーや松下電器は、最後の光ディスクになるのだから、できるだけ最大容量を達成するべく技術開発を継続していた。
5.ソニー株式会社
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