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企業グループ経営研究会8月例会 [MOT after Graduation]

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 WBS在籍時に指導教授だったT本先生が所長をされている経営研究所の例会に先日参加してきました。場所は丸の内三菱ビルヂングB1Fにあります。提言される方は株式会社ナナオ(以下ナナオ)の代表取締役社長 実森 祥隆さんです。テーマは『ビジネスモデルの変遷とターニングポイント』です。ナナオと言えばPCモニターがCRTだったころにソニーのトリニトロンを採用しためちゃくちゃ格好いいけどめちゃくちゃ高い製品を思い出しちゃいますね(笑)。LCDになってもデザインの素晴らしさは変わっていません。しかし残念ながら性能の素晴らしさを購入して確かめることはできませんでした(泣)。

 ナナオのコアコンピタンスは『映像に関わるものは全て』です。PCモニターから始まって、現在では医療用、航空管制用を初めてとした特定用途で圧倒的なNo.1シェアを獲得しています。ナナオは1968年に創業していますが、元々は村田製作所のオーナーが個人的に出資して出来た会社です。今でも創業一族の名が大株主の中に見つけることができます。ナナオの最近の業績は他の電機メーカーと同じように売上減に直面してます。原因はアミューズメント事業(パチンコ・スロット)の売上半減と為替(対ユーロで円が2倍、ウォンが1/2になった)だそうです。

 ナナオのビジネスモデルは、一般のLCDパネルを購入して、それにコストをかけて付加価値を付けて売る、というものです。モニターだけ売っても全然儲からないので、サービスも含めてソリューション売りしているというわけです。一般的にはキーデバイスを囲い込む(パートナーシップとか内製化)のが技術戦略の鍵となることが多いのですが、ナナオはこの方法をとってはいません。では一体どうしているのでしょうか。

 CRTのときはソニーのトリニトロンを買ってきて、周辺回路の設計と生産工程内の調整技術を差別化の源泉としていました。日本生産にこだわっているのもこの為です。LCD時代では独自のASICを起こしてまで画質にこだわりを見せていますが、LCDにはほとんど調整工程がありません。そこでナナオは次の2つの方法をとります。ひとつは製品用途向けに適したLCDパネルをチョイスする。もう一つは、LCDパネルメーカーと信頼関係を築きあげ、最新のパネルをいち早く採用できるようにする、ということでした。

 前者は競合他社も真似ができると思いますが、後者はすぐ構築できるものではありません。ナナオは次の方法でBtoBブランディングを行なっています。ナナオはLCDパネルの評価技術に優れています。ですからナナオが採用するパネルの品質は高いということになり、LCDパネルメーカーはサンプルをナナオに提出して評価してもらってお墨付きをもらおうとします。ナナオは(LCDパネルメーカーからの)依頼があったら積極的に評価して結果をLCDパネルメーカーへフィードバックします。

 こうすることで新しいパネルが他の会社よりも先にナナオに集まることになり、ナナオは新しいパネルを採用した新製品をいち早く市場に出すことが出来るというわけです。つまりCRTのときは設計と調整スキルで、LCDの時は設計と評価で技術の差異化をしていたわけですね。その代わりスピードが要求されるので、実盛社長は「戦艦ではなく巡洋艦で」とおっしゃっておりました。そこでT本先生が「巡洋艦まではキャプテンが舵をにぎる」とフォローしたのはさすがでしたね(笑)。

 キーデバイスを持っていないからといって安易にあきらめてはいけないのねと改めて思った1日でした。良い物を出すには、その為の仕込みも必要なんですね。

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hosoP

目からうろこの落ちる想いで読ませていただきました。
アプリケーション技術でキチンと差別化できるものなんですね。
自分の視点をもっと増やさねば。

by hosoP (2012-09-02 20:51) 

Peugeot

ナナオのビジネスモデルは、常に新しい技術を採用して走り続けることが要求されるビジネスモデルなので、キャプテン(=実盛さん)の腕の見せ所ですよね(笑)。

私は、技術の差異化と言うよりはむしろ時間の差異化だと思います。時間の差異化をナナオのコア・バリューの映像評価技術で実現しているわけですよね。
by Peugeot (2012-09-02 23:08) 

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