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WBSビジネスネットワーク 内田和成教授記念講演 [MOT after Graduation]

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 早稲田大学ビジネススクールの同窓会が開催され、そこで内田和成先生の記念講演があったので出席してきました。先生は開口一番、「WBSネットワークという同窓会の名前が分かりにくい。なぜ分かりやすく「同窓会」という名前にしなかったのか?」と言って会場を和ませた後、講演が始まりました(笑)。

 ゼミ生の希望でゼミ旅行で中国へ行って上海の経営者と話をしたら、彼らの最大の経営問題は「空洞化」だと聞いて大変驚いた。上海、広州等の沿岸分の大都市は他地域と比較して高給だが、内陸部でも(沿岸部ほどではなくても)賃金が上昇してきたので、沿岸部まで出稼ぎに行かなくても良くなった。日本でも何年も前から空洞化は議論されていたがいまだに結論は出ていない。

 またミャンマーへ行って現地の若手経営者と話をしてきたが、アメリカと国交がなかったにも関わらずとても流暢に英語を話していた。JETROの事務所にもいってがそこでは「日本の企業はスピードが遅い」と言われてしまった。日本は世界の物事の進め方とずれてきてしまっているようだ。

 一方国内はどうか。日本は今、構造改革のまっただ中である。数字で見える部分では、先日公表された国勢調査の速報によると、世帯構成の変化が顕著である。一番多い世帯構成は一人暮らしであり、いままで標準世帯と言われた4人世帯はすでに日本の世帯構成を代表していない。標準世帯を前提としたマーケティングはすでに機能しなくなっている。最近は老人がコンビニへ行く様になった。スーパーでは標準世帯向けなので食材の量が多く、高くても1人で調度良い分量のコンビニで買い物をするようになった。

 一人暮らし世帯で多いのは、一方の配偶者が死去した世帯と、未婚者の世帯である。日本の現在の世帯構成にフォーカスした事例を幾つか紹介する。ユニ・チャームはおむつを作っている会社だが、先日老人向けの売上が乳幼児向けの売上を逆転した。乳幼児はいつか「おもつ」を卒業するが、老人は残りの人生を共にすることになるので累積的に増加する。また老人向けの商品はおおっぴらには買えないので、乳幼児向けとは異なるチャンネルの開拓が同時に必要だ。

 クックパッドは1000万人以上の会員を抱える巨大な料理レシピのサイトで、30代の女性に圧倒的な支持を得ている。30代の女性の2人に1人が会員であると言われている。そのクックパッドで人気のメニューは見栄えが良いメニューともう一つはすぐに出来るメニューだそうだ。すなわちひとり暮らしの女性向きのメニューというわけだ。最後に大戸屋は一人でも食事ができるレストランだが、お店の9割の立地がビルの地下1Fか2Fにある。一人で食事しているところを人に見られないように配慮している為だ。 

 次に数字で分からない部分では、3.11以降(世の中が)エコ志向になったと言える。例えば自転車通勤が増えたり、トヨタのプリウスがベストセラーカーになったり、原発反対運動が挙げられる。また食についても話題になった。コカ・コーラの「いろはす」は若者を中心にヒットした。これはペット容器が薄く、簡単に潰して捨てられる。これは省資源であるとしてエコに貢献していることを示せるところが受けたのではないか。ヤマト運輸は宅急便東北復興支援で1つあたり10円の寄付を募ったが、総額140億円の寄付になった。世の中の関心がどこへ移っていくのかを考えていくべきである。

 これからどうすればよいか。世の中は明日から急に変わるわけではない。ゆでガエルにならないように注意しなければならない。戦略に正解はない。かつてグローバルスタンダードがもてはやされたが、あれはアメリカンスタンダードそのものだった。でもアメリカが世界を制覇できているかと言ったらそうはなっていない。ビジネススクールもこれだと教えられるような解はない。自分の答え、「自分解」を探さないといけない。

 ユニクロとしまむらはどちらもファストファッションで成功した会社だが、戦略は全く異なる。ユニクロはすべての世代におしゃれなファッションを驚くような低価格で提供している。その為都心のしゃれた住宅地に出店して、そこへ少品種・大量生産された製品を短納期で供給するために中国の工場で大量生産している。一方しまむらは郊外の中高校生と主婦がターゲットで、工場は持たず全量仕入れている。

 ビレッジヴァンガードはチェーンオペレーションの基本を無視している。本来チェーンオペレーションの基本はスケールメリットを活かすためにどの店も同じ品揃えでオペレーションはマニュアルで管理されている。マクドナルトが好例である。ヴィレッジヴァンガードは店長の裁量で仕入をしており、かつ店長同士を競わせている。この為店舗には店長のカラーが出るわけだが、このカラーに顧客が飽きてくることがある。その時は店長を入れ替えてカラーを変えるようにしている。

 ダイソーの社長は、「俺達は主婦の為のゲームセンターになる」と言っていた。100円玉を握りしめて100均ショップへ行って家事のストレスを発散させるわけである。主婦は日ごろ倹約しているので、大金を使うわけには行かず、100円くらいがちょうどいい。青山フラワーマーケットは高価な目的買いの花を普段買いしてもらおうとしている。通勤・通学で毎日通るターミナル駅構内に出店し、花束やブーケを最初から用意しておいて、花を毎日買ってもらえるように花の販売価格を下げても売れ残りを出さずに利益を確保できるようにした。

 自分解の時代になると、オフィスにとどまっていても答えは見つからない。花王の社長も「きょろきょろする好奇心が大事」といっているし、高級レストランのシェフもメニュー開発をする際にキッチンにいても思いつかないそうである。問題意識を持って外に出れば、何気ない景色が宝の山に見える。フランスの文学者、マルセル・ブルーストの言葉に「本当の発見の旅とは、新しい土地を探すことではなく、新しい目で見ることである」というのがある。

 短い時間でしたが、内田先生の懐の広いところを垣間見させてもらった講演会でしたね。 


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