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【Case Study】東芝デジタルメディアネットワーク社 2005年-1/8 [MOT after Graduation]

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 WBS在学中に一度は書いてみたいと思っていた、「ケース」を今回書いてみたので今回全7回に渡ってアップロードしたいと思います。「ケース」のテーマは、次世代光ディスクについてです。ソニー他のブルーレイ・ディスクと東芝のHD DVDがポストDVDの座を狙って熾烈な闘いを繰り広げたことを覚えている方は多いでしょう。

 このケースはすべて公に発表されている資料に基づいて作成されています。一部人物の名前は仮名を用いています。またこのケースは特定の企業の優劣を論じるものではありません。

1. 2005年5月10日 日本経済新聞朝刊

 株式会社東芝のF執行役上席常務(当時)は日経新聞の朝刊を見て我が目を疑った。今までソニー、松下電器産業(現パナソニック)、経済産業省、そして東芝の間で行われていた次世代DVDの規格統一の交渉内容が報道されていた。しかも「次世代DVDはソニー方式で統一」とある。これは交渉内容と異なっていた。東芝としてはディスクの基板厚は0.6mmにこだわらず交渉のテーブルに付くとは言ったが、0.1mmで良いとは一度も言ってはいない。これはきっと交渉を有利に進めるために、ソニーが日経にリークしたのではないかとさえ思えてくる。

 ソニーと松下電器は。2層のBD-ROMディスクの歩留まりは改善していると主張しているが、それを裏付けるデータが出てこない。これはおそらく公表できるレベルに達していないと考えるべきではないか。ソニーと松下電器の主張は一貫してディスク保護層の0.1だけは絶対に譲れないということだった。0.1mmの保護層の検討は東芝でもさんざん行った上での結論である。光ディスクに関しては社内トップの東芝デジタルメディアネットワーク社Y主席技官(当時)が「保護層0.1mmは絶対に出来ない」と言っている以上、ブルーレイ・ディスク陣営からこれに対する反論が無い限り、東芝としても0.1mmで納得する理由が見当たらない。東芝O社長(当時)から規格統一に関して全件を委任されて交渉に望んでいるが、仮に0.1mmを飲んだとしても社内の説得がこのままでは出来そうもない。

 ソニーと松下はしきりにHD DVDの容量の少なさを主張しているが、ブルーレイの規格が策定した頃と異なり、HDDの価格が下がっているので、HDDに記録した映像をあえて光ディスクに書き出す必要はないのではないか。残るは映画コンテンツのセルまたはレンタル用途だが、これは今後のオーサリング技術の発展と、従来のMPEG2より高圧縮の方式を採用しても十分な画質が確保できる目処が立っている。

 いずれにせよ、東芝が保護層0.1mmを受け入れる納得出来る理由はブルーレイ陣営からは聞くことが出来なかった以上、この交渉は決裂せざるを得まい。社内カンパニーであるデジタルメディアネットワーク社の社長でもあるFの頭は、既に交渉決裂後の規格争いをどのように進めようかと思いを巡らせていた。

 

図表1 東芝組織図(2010年現在)

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(注:東芝は2010年4月にデジタルメディアネットワーク社をビジュアルプロダクツ社とストレージプロダクツ社に分社化している【出典】東芝ホームページ)

 

東芝デジタルメディアネットワーク社 2005年 目次

1.2005年5月10日 日本経済新聞朝刊

2.光ディスク市場

3.東芝デジタルメディアネットワーク社

4.次世代光ディスク

5.ソニー株式会社

6.次世代DVDを取り巻く業界(前編)

7.次世代DVDを取り巻く業界(後編)

8.取りうる選択肢


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