【Case Study】東芝デジタルメディアネットワーク社 2005年-4/8 [MOT after Graduation]
WBS在学中に一度は書いてみたいと思っていた、「ケース」を今回書いてみたので今回全8回に渡ってアップロードしたいと思います。「ケース」のテーマは、次世代光ディスクについてです。ソニー他のブルーレイ・ディスクと東芝のHD DVDがポストDVDの座を狙って熾烈な闘いを繰り広げたことを覚えている方は多いでしょう。第4回は「次世代光ディスク」です。
このケースはすべて公に発表されている資料に基づいて作成されています。一部人物の名前は仮名を用いています。またこのケースは特定の企業の優劣を論じるものではありません。
4. 次世代光ディスク
(1)HD-DVD
HD-DVDとは、青紫レーザー光を利用してDVD、CDと同様に直径12cmのディスクに記録された信号を読み書きする記録再生装置のことである。2003年11月にDVDの規格制定団体であるDVDフォーラムで承認された。この規格は東芝とNECが共同で「AOD(Advanced Optical Disc)」として開発を進めていたものが「HD-DVD」に改称されたものである。
規格の主な特徴は、DVDと同様に0.6mmの暑さのカバー層を有した直径12cmの光ディスクの両面に、波長405nmの青紫色レーザーと開口数(N.A.)0.65の対物レンズを用いて信号の記録再生を行う。DVDとの互換性を重視した規格であるため、片面の容量は15GBであり、2層ディスクで30GBにとどまる。このままではデジタル放送を2時間以上そのままのファイル容量では記録できないが、H.264 AVC、VC9等の圧縮方式を採用することによりディスク記録容量の不足を補う。2003年に再生規格の「HD DVD-ROM」、2004年には記録再生規格の「HD DVD-R/RW」がDVDフォーラムで承認された。
(2)ブルーレイ・ディスク(Blu-ray Disc)
ブルーレイ・ディスクとは、先に述べたHD-DVDと同様に、青紫レーザー光を利用してDVD、CDと同様に直径12cmのディスクに記録された信号を読み書きする記録再生装置のことである。2002年2月に、ソニー、松下電器産業(現パナソニック)を始めとする9社が共同で仕様を策定し、翌年よりライセンスを開始すると発表した。この規格は、ソニーとフィリップスが1997年より策定を行っていた「DVR-blue」規格をベースにしている。
規格の主な特徴は、0.1mmのカバー層を有した直径12cmの光ディスクの片面に、波長405nmの青紫色レーザーと開口数(N.A.)0.85の対物レンズを用いて信号の記録再生を行う。映像記録方式はMPEG-2 TS、音声はAC3/MPEG-1 Layer2をサポートしている。これによりディスク1枚に最大27GBの映像ファイルが記録可能である。これはBSデジタル放送なら、放送したままの画質で2時間以上の録画が可能であり、また標準(SD)画質の録画なら13時間以上録画可能な記録容量である。
ただし、最初に発表されたのは、記録再生可能なBD-RE(ReWritable)のみであり、ディスク記録面を保護するためにカートリッジに入れたまま使用する仕様(後にTDKがハードコーティング技術を開発しカートリッジは不要になった)になっていた。北米を初めとする海外で主流になると想定される再生専用のBD-ROM(Read Only Memory)や、PC用途のBD-R(Recordable)の規格は2006年に策定される見込みである。
ブルーレイ・ディスク規格を採用した製品は、2003年4月にソニーからBDZ-S77、翌2004年7月に松下電器産業(現パナソニック)からDMR-BW100/200が発売されているが、対応しているフォーマットはBD-REのみである(松下電器産業製はBD-ROM対応)。
参加を表明した企業数は2005年8月現在、140社を超えている。
(3)次世代光ディスクの開発
SD vs MMCD 光ディスクの次世代規格を巡る争いはこれが初めてではない。DVDの規格を統一する際もソニーと激しい闘いを演じている。当時東芝は次世代光ディスクの規格として松下電器産業(現パナソニック)らと策定したSD(Super Density Disc)とソニーとフィリップスで策定したCDとの互換性を重視したがSDと比較して容量で見劣りのするMMCD(Multi Media Compact Disc)の二つの規格に分かれていたが、1995年にソニーが折れる形でSDの物理フォーマットとソニーのエラー訂正方式を取り込むことでDVD規格として統一された。SD陣営の成功要因は、映像コンテンツホルダーであるハリウッドの要望(CDと同じサイズのディスクに片面135分の映画が収録できること。そして、劇場なみの高画質であること)を実現するために、
• 0.6mm厚のディスクを2枚貼りあわせたディスク製造に成功し、片面単層5GBの容量(MMCDは 3.7GB)を実現した
• 2層片面読み出しに成功し、8.7GBまで容量を拡大した
• DVD/CD互換読み出しに成功した
の3つの技術的ブレイクスルーがあったからである。
3-1.HD-DVD陣営
東芝もソニーと同様に次世代光ディスクの研究開発を進めていた。もちろん東芝もソニーと同じ問題に直面していた。光ディスクの保護層厚0.1mmは評価していたが、生産上の歩留まりが危惧される為にDVDと同じ0.6mmを採用した。この為、対物レンズの開口数(N.A.)を0.85まで上げられず、DVD記録用の光学ピックアップが採用している開口数(N.A.)0.65に留めた。これにより対物レンズと光ディスクの距離をDVD並に確保し、さらに光ディスクの保護層の厚みを0.6mmのまま留めることが可能になった。光ディスクの保護層の厚み0.6mmの技術開発は当時NECが行っており、形としてはNECの提案に東芝が乗った形になる。
しかしこの決断の副作用として、光ディスク記録面上の光束径を絞り込むことが出来ず、光ディスクの記録容量がブルーレイ・ディスクと比べて見劣りすることになった。そこで東芝は次の対応をとる。まずブルーレイ・ディスクは映像信号の圧縮方式としてMPEG2 TSを採用したが、HD DVDでは最新のさらに信号が圧縮できるH.264 AVCとマイクロソフトのWindows Media Video 9(VC9)を採用する。それでも容量が必要な倍は光ディスクの多層化で対応する。これにより片面でHD画質の映画を1本収録可能となり、結果として映像コンテンツホルダーのハリウッドへの訴求力が増すことになった。
3-2.ブルーレイ・ディスク陣営
ソニーはMMCDの失敗に学び、従来規格との互換性よりも最大の容量を実現できる最先端の技術を導入することにした。一般に光ディスクの記録面上に結像する光束径は、対物レンズの開口数(N.A.)に正比例、半導体レーザーの発振波長に反比例する。したがって出来るだけ大きな開口数(N.A.)を持つ対物レンズと出来るだけ発振波長が短い半導体レーザーを使用すれば最も光束径が小さい、すなわち記録密度が高い光ディスクを作り出すことが出来る。
当時は開口数(N.A.)0.85を一体で製造する技術が無く、複数のレンズを組み合わせて、開口数(N.A.)0.85を実現していた。この為、ディスクとレンズの距離がDVDと比較して近くなってしまい、ディスクと対物レンズが接触するリスクが高くなっている。また青紫色レーザーは、1995年に日亜化学工業が室内パルス発振に成功したばかりであり、青紫色レーザーの製品化はまだ先の話であった。
ディスクのそり等の原因でディスクの記録面が傾いてしまうことがあるが、開口数(N.A.)0.85の対物レンズを採用したことで、さらにその影響が大きくなってしまう。この為にブレーレイ・ディスクでは、ディスク記録面を覆う透明な保護層をDVDの0.6mmから薄くして0.1mmにすることでディスクの傾きの影響を低減している。
当時の最先端の技術を採用することで、DVDやCD等の従来のメディアとの互換性が確保できなくなっていたが、ソニーが発売済のBDレコーダーBDZ-S77では、ブルーレイ・レコーダー用の光学ピックアップとDVD/CD再生用の光学ピックアップを合計2台搭載して互換性を確保していた。その後は2つの光学ピックアップの統合が進み、ひとつの光学ピックアップで、ブルーレイ・ディスク、DVD、CDの3種類のメディアの記録再生が可能になっている。
図表5 HD DVDとBlu-rayロゴ
図表6 レーザーの波長と開口数(N.A.)の比較
図表7 ディスク上のピットのイメージ
東芝デジタルメディアネットワーク社 2005年 目次
4.次世代光ディスク
http://mafaldastasi.net
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もちろん、メディアという点に関してですけどね!
しかし、メディアというのは重要な時もありますから馬鹿にできませんよ。
by デジタルメディアの役割 (2012-04-26 14:38)
デジタルメディアの役割さん、初めまして。
コメントありがとうございます。
参考にさせていただきますね。
by Peugeot (2012-04-26 16:16)